■試合にのみこまれないために
指導者として、試合で思うように動けなくなっている子どもたちに歯がゆい経験をされたことはないでしょうか。選手である子どもたち自身も、良い流れをつくっていきたい気持ちはあっても、試合の雰囲気にのまれてしまったり、相手チームに圧倒されてしまうことはあると思います。そんなときは、イメージトレーニングを活用すれば、試合でも自分たちのペースを保ちながら、自分たちの思うように試合を進めていく手助けになります。イメージトレーニングの中で、事前に自分の思うような試合運びになるような良いイメージを繰り返し思い描き、徹底的に自分に焼き付けておくのです。悪いイメージは、悪い結果を引き起こしてしまいますので、どんな状態のときでも、良いイメージを持って試合に臨むことが大切です。今回は、試合を成功に導くイメージトレーニングを紹介しましょう。
■試合をイメージしてみよう
まずは次の試合を想像してみてください。具体的な対戦相手や日程が決まっていれば、その試合を思い描けばいいのですが、もし、次の試合が決まっていなくても、想像の中でつくってもいいのです。選手でなくても選手として出場するつもりでイメージしてください。また、目指している大会があるのなら、その大会をイメージしてもいいでしょう。空想の中でタイムマシンにのって、その試合を見に行きましょう。その試合はどんな展開になったとしても、自分の望むように試合を進めることができる試合です。
それは、どんな試合会場でしょうか。周りには何が見えますか。周りには誰がいるでしょうか。イメージの中で見えるものを細かいところまで詳しく見ていきましょう。
その会場にいる自分に意識を向けてください。そのとき、自分はどんな気持ちになっているでしょうか。どんなことを感じているでしょうか。どんな気持ちになっていたとしても、今からの試合は自分の思うように試合を進めることができます。
試合会場に着きました。試合会場に着いたら、まず何をするでしょうか。荷物を置いて練習の準備をするところをイメージしてみましょう。
練習がはじまります。まず、いつもの練習をしながらグラウンドのコンディションを確認します。そのあとどんなふうに練習するのか詳しくイメージしてみましょう。
練習が終わって集まりました。試合開始までの間は、どのように過ごすでしょうか。
いよいよ試合がはじまります。守備についてもいいですし、打席が回ってくるまで順番を待つところでもいいのでイメージしてみましょう。
1回の表が終わりました。どのような試合展開しているでしょうか。相手が強くても焦ることはありません。しっかり守って、声を出し合いムードをつくっていきましょう。
1回の裏が終わりました。相手のチームの実力がわかりました。でも焦ることはありません。自分の力を最大限に発揮することだけに集中しましょう。
2回の表、裏と進んでいきます。自分の守っているところにボールが飛んできました。あなたは、「絶対捕ってやる」心の中でプラスの言葉を繰り返しながら、ボールを確実にキャッチし、送球します。
自分の打席がそろそろまわってきます。。心の中では自分自身にプラスの言葉をかけます。「大丈夫!打てる!」そう心でつぶやきながらあなたは準備をします。ウェイティんグエリアで深呼吸をして、いよいよバッターボックスに立ちます。「打てる!」と心でつぶやくながらボールに集中します。その後、どんなボールがとんできて、どんなボールを打っていくのかまでイメージしてみてください。
打ったらどんなふうに塁にでるのか、塁に出てからはどんなふうに進んでいくのかまでイメージしてみましょう。
その後も試合はどんどん続いていきます。相手チームの反撃もイメージしながら、そのときどう対応するのかをイメージしてみましょう。もし、ピンチの場面が頭に浮かんできても打ち消さなくてもいいのです。そのピンチをどうやって切り抜けるのか、ピンチの乗り越え方までイメージで繰り返しておけば、本番でも焦らずに、想定の範囲内として対処することができます。納得のいく結果が得られるまでイメージを繰り返し、いいイメージの回路を自分の中につくってください。
そのようにしながら、試合の最後まで詳しくイメージしていきます。
試合がイメージし終わったら、その後の表彰式までもイメージしておくといいでしょう。
どうでしたか?うまくイメージできたでしょうか。子どもたちはイメージできているようでしょうか。イメージするのが難しいようであれば、紙に記入しながら、イメージをすすめていくことも効果的です。
このイメージトレーニングは、普段の練習の中で時間を10分くらいとってみんなでやってみてもいいですし、一度やり方を理解したら、それぞれが時間を見つけて何回も何回もイメージを繰り返すように指導します。例えばお風呂に入ったときや、眠る前に布団の中でやってみたり、電車に乗っているときなど少しの時間を活用して繰り返すと効果が高まります。1日だけでなく、何日も繰り返して行うことをお勧めします。
また、練習の中でも、その試合でプレーしているところをイメージしながら練習するというように応用しても効果的です。イメージの中で予行練習しておくことが大切なのです。
チームによっては朝起きるところからイメージさせ、起きたら何をするのか、どのように身支度し、朝ごはんは何をどれくらい食べて、集合場所までどうやって行くのかというところからイメージさせて紙に書かせているところもあるようです。
私自身が現役の頃は、試合のシーンだけを何十回何百回とイメージしていました。イメージの力の凄さを知ってからは、試合だけでなく手に入れたい未来を何度もイメージして自分の力になるように活用しています。イメージは現実を導く力があります。はじめはイメージすることは難しいことかもしれませんが、イメージトレーニングを活用することで得られる結果を確認すれば、どんどん上手に活用できるようになると思います。
■指導のポイント
【イメージは現実になる】
『イメージは現実になる』とか『成功は2度創られる。一度はイメージの世界で、2度目は現実の世界で。』という言葉を聞いたことはないでしょうか。これらの言葉が示すように、イメージすることが、現実の試合場面でも素晴らしい力となって味方についてくれます。成功の鍵は、良いイメージを如何に持ち続けることができるかにかかっているといえるでしょう。けれども、多くの子どもたちは悪いイメージを持っていることのほうが多いのです。悪いイメージを持って不安を抱きながら試合をすれば、良い結果になることは難しいでしょう。ですから、イメージトレーニングを行って、良いイメージを確立し良いイメージの回路をつくることで、子どもたちを援助することができます。試合以外のあらゆる場面で、子どもたちをサポートするために『イメージトレーニング』を活用してください。
【イメージトレーニングを成功させる鍵は】
良いイメージを持ってプレーするということは、実力を発揮するためにとても重要なことです。ですから、試合で良いイメージを持ってプレーできるようにイメージトレーニングを行って、良いイメージの回路をつくることが大切なのです。良いイメージを持ってプレーするために必要なことは、イメージトレーニングだけではありません。もう一つ鍵を握っているのは、選手である子どもたち自身が「ベストなプレーが自分にはできる!」と信じられるかどうかにかかっています。いつも自分のプレーの改善点ばかりを指摘されるだけでは、子どもたちは自分を信じることができませんが、自分のプレーの良いところを具体的に指導者に伝えられると、自分を信じる上で大きな力となります。ですから、試合前は特に意識して、子どもたちが自分のプレーと自分に自信が持てるような言葉を意識的に多くしていくことがポイントとなるわけです。「自分は試合でも実力を発揮できる自分である」と信じることができてはじめて、イメージトレーニングは成功へと導いてくれるのです。
次回は、弱点を克服し、自分の幅を広げるためのイメージトレーニングをご紹介いたします。
