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やる気を引き出す

 指導者にとって子どもたちにやる気を持って取り組んで欲しいという願いは共通のものであると思います。しかし、その気持ちとは裏腹に、やる気を引き出すことに苦労されている方も多いでしょう。今回は、子どもたちにやる気を持って取り組むことでどれだけ効果が上がるのかということを、体で確かめてもらいながら、気づきを深め、やる気を引き出す方法をご紹介したいと思います。


■『したい』と『すべき』気持ちの違い
 みなさんは、「やらなくてはいけないのに、やりたくない」とか「なんか体が重くて練習が憂鬱」といった体験はないでしょうか。
 日々の練習を『練習したい』と思って毎回取り組めればいいのですが、気がつかないうちに、『練習しなくては』という気持ちにすりかわってしまうことはよくあることです。
 普段はそんな内面のことまで意識しないで練習に取り組んでいると思いますが、この2つの気持ちの違いは、練習の質や効果に大きな影響を及ぼしています。では、実際にこの『2つの気持ちの違い』がどれだけの『違い』をもたらしているのか、体を使って確かめてみましょう。

【手を振る実験】
 手を振ってもぶつからない場所で行いましょう。一人でもできますが、できれば2人組みで行うとより効果的です。

①はじめに1人が『振りたくないけど振らなくてはいけない』と思いながら両手を横に振ります。もう1人は向かい合ってその手を持って、振りの具合いや様子を確かめてみてください。

②今度は同じ人が『振りたくて振りたくてたまらない』という気持ちで両手を振ります。もう1人はさっきと同じようにその手を持って、振りの具合いや養子を確かめてみましょう。

③1回目の手の振りと2回目の振りではどのような違いがあったでしょうか。2人で行った人は、感じたことを伝え合ってみてください。

④2人の役割を交代して①~③を行います。

 どのような違いを発見できたでしょうか。『振らなくてはいけない』と思いながら振ったときと、『振りたい』と思いながら振ったときの体の動きはどう違いましたか。手の重さや動きの硬さ、リズムはどういう違いがあったでしょう。顔の表情や気持ちはどうだったでしょう。振りたいと思いながら振ったときには、手も軽くて振りも大きくなり、動きがリズムカルになったと思います。顔の表情もにこやかで、心も軽くウキウキした感覚ではなかったでしょうか。それに比べて、振らなければならないと思いながら振ったときは、動きは硬くて小さいし、なんか堅苦しく表情も眉間にしわがよっていったことと思います。
 手の振りを練習に置き換えて考えてみましょう。辛いトレーニングメニューや苦手なものに取組むときは、「やらなければいけないからやる」という気持ちが芽生えてしまうものです。そのときに気持ちを意識的に切り替えるのが効果的です。前回心の声をマイナスからプラスに切り替えるプログラムを紹介しましたが、これも同じです。自分がやりたくないのにやらなければいけないから取り組んでいるときは、「自分の目標を達成するために、自分はこの練習がしたいんだ!」と意識して心の声を切り替えてみる。そうすることで練習の質を高め、効果を上げていくことができるようになります。


■目標を持つことの意味

みなさんは、日々の練習の中で、どのような目標を持って練習に取り組んでいるしょうか。目標は持った方がいいことは多くの人が知っていることですが、目標を持つことによってどれだけ効果上がるのかということを実感している人は少ないと思います。
 同じ練習をこなしても、自分の目標を持って取り組むのと、ただ練習メニューをこなすのでは、練習の質も異なるし、得られる効果も異なるということを、自分の身体で確かめてみましょう。

【目標を持つことの意味を実感する実験】
 5mくらいまっすぐに歩けるスペースを確保します。1人でもできますが、できれば2人で行うとよいでしょう。

① はじめに1人が『ただなんとなく』歩きます。もう1人は歩く途中に立って、手で歩くのを妨害します。

② 今度は、歩く先に『自分の輝かしい希望』があることをイメージしながら、歩きます。もう1人は先ほどと同じように歩く途中で手で歩くのを妨害します。

③ 1回目と2回目の歩きには、どのような違いが感じられたのかを2人組で話し合います。

④ 今度は2人の役割を交代して同じように①~③を行ってみましょう。

 どのような違いを発見できたでしょうか。『ただなんとなく』歩いたときは、妨害されて止まってしまった人が多いと思いますが、輝かしい目標をイメージして歩いたときは、妨害されても妨害されたことは気にならないくらいの勢いで前に進んでいったと思います。歩いている感じも、なんか楽しくてどんどん前に進みたくなる感覚ではなかったでしょうか。パワー、スピード、やる気、障害の感じ方などに大きな違いを感じられたと思います。
 これを練習に置き換えて考えてみてください。ただなんとなく練習したときと、自分の目標を明確に意識しながら練習したときにも同じことがいえます。練習すれば上手くなるというものではありません。
 一つ一つの練習も、「この練習は何のためにやるのか。それによって自分は何をえたいのか」ということを意識して練習するのと、指導者に指示されたからやるのかというのでは、同じ練習メニューでも取り組みの質もその練習から得られる結果も大きく違ってくるのです。このことを気づくことはとても大事なことだと思います。
 日々の練習の中で、この気づきを持って取り組んでいくと、練習が自分のものとなり、やる気を自分でコントロールできるようになります。辛い練習メニューでも自分のためと思えば、苦ではなくなることがわかりました。目標達成のために自分で工夫しながら動いたり、練習後に自分の練習成果を確認して、この練習で自分がどのくらい成長できたのかを確認することで、自分の目標に近づくプロセスをたどっていくことができます。
 目標が明確になったときから、意識が変わり、行動が変わり、本当の意味でのやる気が出てきます。是非、日々の練習の中で、子どもたち自身がこの練習で自分は何を手に入れたいのかという目標を決めるという習慣をつけてあげていってください。


■子どものやる気を引き出すために指導者ができること

 今回は、やる気を持って取り組むときと、そうでないときの違いを確認して、自分の気持ちを切り替えながらやる気をコントロールする方法を紹介しました。言葉で説明することと合わせて、自分の体で違いを確認することがポイントです。
 それから、日々の練習の中で、『今日の練習の意味』や『今日の練習の目標』を明確にして子どもたちに確認しながら練習を行うことをお勧めします。指導者のちょっとした言葉がけが、子どもたちのやる気を持続させるのに役立ちます。
 大人は練習メニューを与えすぎてしまう傾向がありますが、与えすぎはかえって子どもたちのやる気をそいでしまうことが多々あります。「今やろうと思ってたのに...」という言葉がありますが、やろうと思っていたことでも「やりなさい」と言われた瞬間にやる気を失うことがありますよね。中日ドラゴンズの落合監督はキャンプで練習メニューを白紙にして、選手の自主性に任せたそうですが、これは与えられた練習ではなく、自分の目標のためにはどんな練習が必要かを選手自らに考えさせたよい例だと思います。
 子どもたちのやる気を引き出したかったら、練習メニューを指示してやらせるという練習スタイルから、子どもたち自身が、自分の目標達成のために今日どんな練習をしたらいいのかを子どもたち考えさせて、その内容を練習に取り入れるという自立した練習スタイルに切り替えていくことだと思います。やらされていると思う練習は身にならないからです。練習の中に、ある程度子どもたち自身が主体的に動ける部分を組み入れていきながら比重を調整していくといいでしょう。任せて信頼することも、自立には必要ですから、段階をおいながら自立した練習ができるようにサポートしてあげてください。
 次回は、子どもたち自身の目標を引き出してやる気を高めるために、質問技法を用いた『目標を見つけるプログラム』をご紹介します。

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2010年5月30日 17:36に投稿されたエントリーのページです。

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